肩関節は構造上、外れやすい
肩関節、というのは非常に複雑な構造をなしていて、
狭義の肩関節というのは肩甲骨と上腕骨から成り立っています。
肩甲骨は、みなさんの背中のほうにある骨・・・という認識が
高いかもしれませんが、この肩甲骨の関節窩というぽこっと凹になった
部分があって、
そこに凸(といっても球状ですが)になる上腕骨頭がはまるような感じで
肩関節を構成しているのです。
ところが肩関節というのはご存じのように非常に自由度の高い、
つまりいろんな方向に、広い範囲で動く関節で、
守らないと簡単に外れてしまいます。
そこで、腱板といわれるインナーマッスルが上腕骨を
肩甲骨に引き付ける役割をして、その上に三角筋が
肩関節をすっぽり覆うような形で肩関節が簡単に外れないように・・・
安定性を高めてくれています。
上図を見ていただければわかるのですが、
関節窩というのは上腕骨頭をすっぽりと覆っているわけではないのです。
反復性肩関節脱臼とは
ですので構造上、筋肉などで安定性を高めても脱臼しやすいのが
肩関節の特徴で、脱臼癖などという言葉を聞いたことがあるかもしれませんが
一度脱臼するとそのあと何度も脱臼してしまいがちなのも
肩の特徴です。これを反復性肩関節脱臼といいます。
(中には、自分で外せるし自分で治すこともできる・・・なんて
方もいたりします・・・)
しかし、もともとある正しい位置からずれることを意味するので、
脱臼した際や元に戻す際に周りの組織を傷つけたりする場合もあるので
自分で外したり戻したり、ということはあまり適切ではありません。
なぜ一度脱臼するとまた外れやすくなるのか?というと、
これも構造上の問題です。
上図の通り、関節窩だけではどう考えても上腕骨を受け止めるほどの
深みがないので、その深みを補うための関節唇(かんせつしん)と
いう部分が関節窩の縁に存在します。
これも、肩関節の安定性に寄与しているということです。
その関節唇が、一度目の脱臼の際に傷つけられてしまったり、
関節窩からはがれてしまう場合があります。
これを Bankart損傷(バンカート損傷) といいます。
つまり、関節唇が関節窩からはがれてしまうことで
肩関節の安定性がなくなってしまい、肩が外れやすくなって
しまうわけです。
ですから一度目の脱臼→関節唇損傷・はがれる→脱臼しやすくなる、
ということですね(なんなら関節唇と一緒に関節窩も
傷つく場合もあります)。
ただ関節唇損傷というのは脱臼だけでなく、激しい肩の運動でも起こることが
あります。
脳梗塞での亜脱臼
脳梗塞などになると「亜脱臼」と言い、
慢性的に麻痺側の肩関節が半横指~1・2横指分程度、
外れたままの状態になることもあります。
脳梗塞で麻痺が起きると急に脱臼する、というわけではありません。
肩関節を安定させる筋肉が働きにくくなり、
重力位などで徐々に上腕骨が下方へずれていき、
時間をかけて亜脱臼状態を生みだす・・・ということになります。
これは、前述の肩を支えるはずの筋肉が麻痺により動かなくなることで、
肩関節の安定性が図られなくなってしまうことで
起こるものですからこういう亜脱臼状態を
病院で元に戻すことはしません。麻痺が改善してこない限りは
治してもまた同じことになるからというのと、
亜脱臼自体が何か大きな問題を引き起こすわけではないからです。
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