車の運転に必要な技能とは
通常、車の運転に必要なことというのは
あまり意識しないものです。
なぜなら車の運転というのは慣れてくればあまり意識せずに
行えます。最初は自転車の運転でも意識的に、30mほど進むのに
何度も失敗を繰り返したり途中で降りたりして
慣れるまでは時間がかかるのに、
慣れてくれば当たり前のように何kmでも
進むことができます。
ところが脳卒中などの脳血管疾患になると、
うまく車を運転することができません。
片麻痺の影響もあります。うまく両手と両足を
タイミングよく動かして、適切な時に、適切な力で
アクセルを踏んだりブレーキを踏んだり
ギアを切り替えたり、それらの複合的な運動が
必要になってきます。
しかし脳のダメージであったり麻痺の影響にて
そういう運動というのは非常に難しくなるのです。
適切なタイミングで適切な力加減で、というのがまず
片麻痺になると困難です。
そして、体が動かないよりももっと深刻になりやすいのが、
高次脳機能障害です。
例えば片麻痺であれば片麻痺用の運転車両というのも
ありますが、高次脳機能障害があると、
運転どころか普通に歩いたり生活したりということでも
危険なことがたくさんあります。
問題となりやすい、注意障害
たとえば高次脳機能障害で問題になりやすいもので
注意障害というものがあります。
注意障害とは、その名の通り注意機能の障害です。
たとえば、「この文章の中の“あ”を見つけて
〇をつけてください」
という問いがあったとして、
「あしたのてんきよほうは、あめのちくもりです。
あしたはかさをじゅんびしましょう」
という文章があったとします。
“あ”は3つありますね。けれども注意障害があると、
“あ”だけに注意を向けることが難しくなるのです。
もしくはこの程度であれば3つ取り上げることができるけれども、
もっと文字数が多くなると途端に取りこぼしがあったり、
注意を向けて探すのが難しくなったりします。
全く違う文字に〇をつけたりする人もいます。
さらに“し”にも〇をつけてください、というと
より難しくなります。
つまり、何かに選択的に注意を向けたり、
注意を別々のものに向けたりというのは、
誰しも自然とやっていることなのですがそれは
脳機能を働かせているためにできることなのです。
なので脳卒中になり注意障害が起きたり
他の高次脳機能障害も影響した場合は、
日常生活で人が目の前から来ているのに
避けることができずぶつかってしまったり、
ぶつかってしまってもさして問題もないような
態度をとったりします。
半側空間無視・・・つまり視力は正常なのに
麻痺側の認知ができない、ということになると
右・あるいは左側の壁にぶつかったりなども見られるため、
とても危険なのです。
そうでなくてもボディイメージ(自分の体の中心が
どこにあって、各関節・手や足はどのような配置になっているか)
が崩れたり、
感覚障害があればどのくらいの力を出しているのか、
関節をどのようにして動かしているのか、
地に足はついているのか、
どのような姿勢になっているのか・・・・ということが
なかなか分かりません、そうなると
運転どころか生活上でも大変なことが多くなるでしょう。
運転ができるようになるために
脳卒中後、運転を行うにはまず医師の診断書を貰う
必要があります。
そして、免許試験所での適正検査が必要になります。
医師の診断書というのはここで大きな役割を持ちます。
運転に関わる高次脳機能検査
運転に関わる高次脳機能検査はいろいろありますが、
MMSE、TMT、kohs立方体組み合わせテスト、Ray複雑図形模写、
CAT(標準注意機能検査)などがあります。
その検査バッテリーが病院にすべて必ずあるとは限りませんが、
リハビリテーションや評価の過程で可能な人には
高次脳機能検査は行うものです。
セラピストが実際にこれら高次脳機能評価を実施し、
医師に結果を伝えて、医師がそれを加味しながら診断書を書く場合が
多いでしょう。
ただCATのような検査はかなり時間がかかります。
集中力も要するので、注意機能が低い人というのは
全部実施するのも集中力が切れてしまい大変なほどです。
このように施行自体が難しい例だと、運転の再開というのは
難しいでしょう。
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